いざ妊娠したときに、いつどうやって会社や職場のメンバーに報告しようかドキドキや不安がつきまといますよね。
報告する方もされる側も、とまどいや不安があるものですが、新しいいのちの誕生を素直に喜んでもらえると嬉しいもの。喜んでほしいとまではいかなくても、「安心して戻ってきて」とひとこと言ってもらうだけで、どれだけホッとするか…。
しかし、妊娠を機に厳しい対応をせまられる環境があることも事実。いわゆる「マタハラ」ですね。
今回はそんなマタハラの定義と対処法をご紹介します。
マタハラの定義とは?
「マタハラ」はマタニティハラスメントの略称です。
妊娠や出産、育児休業を取得したこと等を理由に、企業側から解雇されたり、減給・降格・不利益な配置転換、契約を更新しない(契社員の場合)といった行為がなされることを「不利益取扱い」といい、上司や同僚が暴言を吐いたり、いやがらせ行為を行う等、就業環境を害する言動を行うことを「ハラスメント」といいます。
妊娠・出産・育児休業に関連し、これらの行為を行うことは広く、「マタハラ」といえるでしょう。
違法となる可能性がある具体的な言動
上記不利益取り扱いについては、しっかり法律があり(男女雇用機会均等法第 9条第 3項、育児・介護休業法第 10条)、厚生労働省のHPでも、違法となる典型例を挙げています。
具体的には、
「妊娠・出産した」「妊婦健診のため仕事を休んだ」「つわりや切迫流産で仕事を休んだ」「産前・産後休業をとった」「育児休業・介護休業をとった」などを理由に、
・解雇された、契約が更新されなかった
・パートになれと強要された
・減給された
・ありえないような配置転換をされた
などの扱いを受けた場合には、ズバリ「不利益取り扱い禁止」に違反するものとして違法となります。
また、
①妊娠を報告したら「使い物にならない」「早く辞めてほしい」と言われた
②検診のための休暇を申請したら「病院は休日に行け」と言われた
③育児短時間勤務制度を利用したところ「あなたが早く帰ると周りは迷惑だ」と言われる
などの行為は、ハラスメントの典型例とされています。
ハラスメントは、精神的苦痛を与えるような言動であればこれに当たるので、「妊娠した奴は仕事が楽でいいよな~」と言われる行為などもマタハラに当たります。
マタハラへの対処法
平成29年1月1日以降、マタハラに関しては全事業主に対し、下記が義務付けられています。
①マタハラ防止指針の明確化及びその周知・啓発
②マタハラ相談・苦情に応じ、適切に対応するための体制整備
③マタハラの迅速かつ適切な事後対応
④マタハラの原因や背景要因を解消するための措置
したがって、まずは社内相談窓口に相談することが視野に入るでしょう。 とはいっても、実際にマタハラが行われている環境で、会社が適切に対応してくれるとは限りません。そのような場合は、会社自体を措置義務違反ということで責任追及することもできます。
社内で相談はちょっと・・・という方には、労働組合や都道府県労働局など、外部の機関に相談することも可能です。どうしても解決しない場合、最終的には、弁護士を立てて争うということになりますが、裁判となる前に、早急に現状を改善できればこれに越したことはないでしょう。
マタハラに関する判例をご紹介
上記「不利益取り扱い」に関する判例として、最高裁平成27年10月23日判決があります。
初の「マタハラ最高裁判決」と呼ばれる画期的判例です。
この判決では、「妊娠・出産・育児休業等に関し、どのような場合が不利益取扱いに当たるか」につき、判断基準を示しています。
この判決の基準によれば、概説すると、
①「妊娠等を契機に不利益取扱いを行ったら、原則違法」となる。
②例外的に、「労働者が自由意思で承諾していたと合理的に認められる場合」や、③「降格が運営上やむを得ない場合で、法の趣旨に反しない範囲のものである場合」には、不利益取扱いにはならない、
とされています。
通常は、「たしかにこの扱いは仕方ない」と本人が納得できないようなもの以外は、この不利益扱いに当たる可能性がありますので泣き寝入りしないことが大事です。
まとめ
今後も会社で働きたい、という思いが強ければ強いほど、会社や上司には逆らえないという恐怖心が強いでしょう。そのため、悔しい思いをしながら泣き寝入りをしてしまう現状が、まだまだ多く見られます。
しかしながら、妊娠・出産は、人生において最も大事なイベントであり、一つの命を授かった大事な時間です。法律的にも、「仕事と両立しながら安心して出産育児をしてほしい」という考えが前提となっています。
出産・育児を大事にできる企業体制は、企業自体の繁栄にもつながるとされています。泣き寝入りはせずに、まずは相談、そして、安心して出産・育児・労働ができる環境を、しっかり勝ち取りましょう。